国際私法
⼈が亡くなったとき、どの国の法律に従って相続⼿続が⾏われるのか、⽇本法とフランス法ではルールが異なります。
⼈が亡くなったとき、どの国の法律に従って相続⼿続が⾏われるのか、⽇本法とフランス法ではルールが異なります。
原則として、被相続⼈の最後の住所地の法律に従うというルールです。(2012年7月4日ヨーロッパ規則・2015年8月17日施行)
例えば、⽇本⼈が⻑年フランスで⽣活し、フランスで亡くなった場合には、原則として、フランスの法律が準拠法となります。
原則として、被相続⼈の国籍の法律に従うというルールです。
もっとも、フランス⼈が⻑年⽇本で⽣活し、⽇本で亡くなった場合には、フランスの国際私法が適⽤される結果、⽇本の法律が準拠法となります
(反致。通則法41条)
被相続⼈(亡くなった⽅)に⽣存配偶者がいない場合といる場合に分けて考えます。
1) 第⼀順位:⼦
(⼦が死亡している場合は孫、孫が死亡している場合はひ孫、・・・)
2) 第⼆順位:親及び兄弟姉妹
(兄弟姉妹が死亡している場合はその⼦、その⼦が死亡している場合はその孫、・・・)
親1⼈につき1/4の相続分、残りを兄弟姉妹が等分で相続する
3) 第三順位:親以外の尊属
⽗側尊属⾎族と⺟側尊属⾎族が1/2ずつ相続する。
それぞれの尊属⾎族のうち、もっとも近い親等の者が相続する(同じ親等の者が複数いる場合は等分する。)。
4) 第四順位:傍系⾎族
(叔⽗、叔⺟、従兄弟姉妹)
1. 被相続⼈に⼦がいた場合
⽣存配偶者は1/4、⼦が残りを相続する。
もっとも、場合によって1/4の相続分の代わりに、遺産全体の⽤益権(usufruit)の相続を選択することができる場合がある。
2.被相続⼈に⼦がおらず、親がいた場合
親両親1⼈につき1/4の相続分、残りを⽣存配偶者が全て相続する。
3. 被相続⼈に⼦も、親もいなかった場合
⽣存配偶者が全てを相続する。
⽣存配偶者は、法定相続分の他に、⼀定の条件の下に、居住場所に対する住居権(⼀時的住居権、終⾝住居権)を有します。
日本の遺留分に類似する概念は、フランス法ではréserve héréditaireと呼ばれます。被相続人は、遺言によって一部の相続人や第三者に自由に財産を処分することができますが、一部の相続人のréserve héréditaireを侵害することができないことになっています。Réserve héréditaireを有するのは、子または生存配偶者のみです。Réserve héréditaireを侵害されたと主張する相続人は、受遺者(légataire)または受贈者(donataire)に対し、遺留分侵害額請求Action en réductionすることになります。
1) 被相続人に子がいた場合
子の数によって、遺産の1/2から3/4について、子が réserve héréditaire を有します。※子がいる場合には、生存配偶者は réserve héréditaire を有しません。
2) 被相続人に子がおらず、生存配偶者だけがいた場合
遺産の1/4について、生存配偶者が réserve héréditaire を有します。
3) 被相続人に子も生存配偶者もいなかった場合
réserve héréditaire を有する相続人はいません。
フランス法においては、⾃筆遺⾔(testament olographe) 、公正証書遺⾔(testament authentique)、秘密遺⾔(testament mystique)が存在します。いずれについても、亡くなるまでの間に変更や撤回が可能です。
⾃筆遺⾔は、以下の3つの有効要件を備える必要があります。
・ ⽂⾯の全てが⾃筆で書かれていること
・ 作成⽇付け(年⽉⽇)が記載されていること
・ 署名がされていること
公正証書遺⾔は、公証⼈2名と証⼈2名の⽴ち会いの元、遺⾔者の申述内容を公証⼈が書き取ることによって作成される遺⾔です。
秘密遺⾔は、内容を誰にも知られることなく作成・保管される遺⾔です。封書に⼊れ、封緘・封印した遺⾔を、証⼈2名の⽴ち合いの元、公証⼈に預けるという⼿続きです。⽂⾯は全て⾃筆である必要はなく、パソコンで作成したものや第三者が代筆したものであっても通⽤します。もっとも、事前に中⾝を確認できないため、法律上適切な⽂⾔が使⽤されていなかった場合など、無効になる危険性があります。現在使⽤されることは極めて少ないようです。
公正証書遺⾔・秘密遺⾔は、公証⼈が遺⾔センター(FCDDV)に登録し、死亡後の検索が可能となります。
また、⾃筆遺⾔も作成後に公証⼈に保管を依頼することによって、遺⾔センター(FCDDV)への登録が可能となります。死亡後の検索が可能となるため、死亡後に遺⾔の存在が第三者に認識されないというリスクを回避することができます。
フランスでは、遺産の中に不動産がある場合、財産の価値が5,000€以上の場合、または遺書若しくは夫婦間の贈与契約があった場合には、必ず公証⼈(notaire)の介入が必要です。
相続⼈から委任を受けた公証⼈が、遺産、相続⼈及び相続分の確定、遺産の清算・配分、税⾦の申告等の諸⼿続を⾏います。
※被相続⼈名義銀⾏⼝座の払戻⼿続も、公証⼈が⾏います。
相続税申告及び納税は、相続開始後6ヶ⽉以内(被相続⼈が海外で死亡した場合は12ヶ⽉以内)にしなければなりません。
被相続⼈がフランスで死亡した場合、または、相続⼈が相続開始時にフランスに居住しており、かつ、相続開始時から遡って10年間の間に6年以上フランスに居住していた場合には、遺産全てについて、フランスでの相続税申告納税義務が⽣じます。
なお、⽣存配偶者の相続税納税義務は全⾯的に免除されます。
⽇本のように、全ての相続⼈に共通の基礎控除はありません。
相続税申告及び納税は、相続開始後10ヶ⽉以内にしなければなりません。
簡単に整理すると、被相続⼈または相続⼈(⽇本国籍)が、相続開始時から遡って10年間の間に⽇本に居住していた場合には、遺産全てについて、⽇本で相続税申告納税義務が⽣じます。
もっとも、⽇本の場合には、3000万円+600万円×相続分基礎控除があり、基礎控除以内に収まる場合には、相続税申告納税義務が発⽣しません。
⽇仏間には相続に関する租税条約がないため、相続税の⼆重課税のリスクが⽣じます。⼀⽅の国で先に相続税を⽀払った場合には、他⽅の国で減額申請が認められることがあります。
詳しくは、弁護⼠や税理⼠などの専⾨家にご相談ください。
【更新日:2023年8月25日】
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